身体を打つ熱い飛沫。
「・・ァ、あ、くぅ・・あ、ユーリぃ・・」
語尾が、自然と媚を含んで甘くなる。
立ったままで、ぴったりと密着しての行為。
背後から抱かかえるように、廻された腕が、胸の突起をいじる。
もう片方で、後蕾を愛撫されながら。
全身が性感帯の如く、飛沫が当たるだけで、感じてしまう。
いきたい。
いかせて欲しい。
ゆるゆるとした快感は、気持ち良すぎて、眩暈がしそうだ。
もう、何度目かの懇願を唇に乗せる。
その度、ユーリは
「分かった」
と、胸を触っていた指を起立した雄蕊に移動させた。一層激しく指を動かして、絶頂に向かわせる。それでもユーリは優しいから。
酷く乱暴に、扱わない。
「はあ、はあ、ぁあッ・・」
ユーリの胸に、後頭部を押し付けて、腕に爪を立てる。
待っていた絶頂感。
射精の、吐き出す気持ちよさに、立っていられない。
そのまま、崩れ落ちるようにユーリにもたれかかった。
頭上から降り頻るシャワーが、洗い流していく。
何度も吐き出した精液も、涙も。
全部。
それでも
『足りない』
と思う自分が、酷く、醜いイキモノに見える。
いや。
事実、醜いイキモノなのだろう。
誠実さの欠片もない。
酷い人間。
一体、何が足りないと言うのだろうか。
ちゃぷん。
耳の直ぐ近くで水音が、した。
恐ろしいほど気持ちがイイ。
情交のそれではなく、ガチコチに固まった全身の節々が、解かれていく気持ちよさ。溶け出してしまいそうに。
浮遊感に、夢かと思ったが。
目蓋をこじ開けると、湯船の中だった。
ちゃぷん。
白い見覚えのある腕が、湯船から出ている肩に、優しく湯をかけている。
「――起きたのか」
膝の上に自分を乗せて、抱かかえたまま、一緒に湯船に浸かっているユーリが言った。
ユーリの肩に頭を乗せているので、顔は見えない。
「・・・・どれ程眠っていた」
「ほんの少しだ。30分も経っていない。もう少し眠るかと思っていた」
離れる元気もなかったのと、眠かったのとで、そのまま、ユーリにもたれかかっている。
湯は、熱すぎず、温すぎず。
体温と同じぐらいか。
そうすると、ユーリには熱いぐらいだ。冬でも真水を浴びるような人間なのだ。ユーリは。
「・・・ユーリ。熱いだろう」
「まあな。しかし、俺に合わせていては、お前が風邪をひく」
「今退く」
身体を離して、湯船から上がろうとすれば、
「俺は大丈夫だ。もう少しこのままでいろ」
「・・・熱くて、湯あたりしても、俺は知らんぞ」
言葉ほど、口調に力はない。
とても眠かった。
幾分、笑いを含んだ声で、
「冷たい奴だ」
と、俺を抱き上げて、ユーリは湯船から上がった。
身体を拭き、髪を乾かし、服を着せ、ベットに寝かせる。
眠かったのを良い事に、したいようにさせておけば、ユーリは甲斐甲斐しく世話を焼く。
まるで、赤ん坊の世話をしているよう。
自分の中に、過去のユーリと現在のユーリの、二人のユーリが存在するように。
ユーリの中の自分は、初めて逢った時の、4歳のままなのだろか、と思う。
「・・・ユーリ」
「どうした」
ユーリのベットで一緒に眠ろうとしている。ユーリの真っ白なパジャマは、少しサイズが大きいので、自分にはダブついてしまう。
同じパジャマを着て、一緒のベットに眠って。
『ボリスが見たらいい気はしないだろうな』
幾ら、自分とユーリの間に『恋愛』が存在しないとは言え。
『俺がおかしいのか』
それとも。ユーリがおかしいのか。
お互いお世辞にも「一般的」とは言い難い生育環境に、それによって歪みまくった精神構造。
何が正しくて何が間違っているのか。
基準からして違うのだから。
全てが間違っていて、全てがあっているのだろう。
決めるのは、自分達。
他人の言葉に左右されることも、その必要もない。
信じるのは、自分達。
だから。
寄り添うのだろうか。
依存しあうのだろうか。
自分達は。
頬に一筋掛かったユーリの紅い髪を、すくい上げて耳にかける。
「・・・何でもない。おやすみ」
「おかしな奴だ。早く眠れ」
腕を伸ばしてくると、額に軽く口付けをした。
はらり
折角かけた髪が、また頬に落ちた。
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