以下はライル=二人目ロックオンを前提に書いたKY妄想文です。
続き物です。
今後の展開は『何でも笑って許せる人』向きです。
「ハロの記録」
ベットに腰掛けて、彼は緩やかに波打つ髪をかきあげた。
今までの人生を捨て、志半ばに倒れた兄弟の意思を継ぎ生きる道を選んだ彼は、「ロックオン・ストラトス」としてCBへの帰還を果たした。
「ロックオン」が以前とは違う人間だと、知っている者は知っているし、知らぬ者にはあえて教えていない。
いつか、気付くかもしれないが、今は生きて帰ってきたロックオンとして振舞っている。
それほど、ロックオンという男はマイスター達に影響を与えたのだと、聞かされたから。
同じ顔をした他人よりも、同じ人物の方が良いに決まっている。
そして、自分とニールは恐ろしいほどよく似ていた。
しかし、本人になりきるには、十年以上離れて暮らしていたせいで、立居振る舞いと言葉使い、あとはパイロットとしての訓練に苦労した。
あとはCBに入ってからのデータを頭に詰め込んでしまえば、完璧に近づく。
「さてと、今日もよろしく頼むよ。ハロ」
手の中には、CBの情報端末が握られている。
長く伸びたコードの先には、オレンジ色のハロ。
ヴェーダに残されていた戦闘データは全て頭に入っている。残りはプライベート。
―――奴さんがCBに入ってから、殆ど毎日一緒に居たからな。
きっと、色んなデータが残っているだろうと、複雑そうな眼で、自分を見ながら言った。
その日から少しずつ、ハロの記録回路に残っているデータを、情報端末で再生する作業をはじめた。
『行こうぜ、相棒』
シュミレーションに向かうニールの笑顔。そして端に映る、今よりも僅かに幼いマイスター達。
食事をするニール。
本を読むニール。
眠るニール。
明るい笑顔に、憂いを帯びた横顔。
何でもない日常と、非日常を繰り返しながら、そこには自分が知らないニールの生きた証があった。
「・・・ニール」
小さく名を呼ぶと、胸がじんわり熱くなる。
かなうのなら、生きている間に逢いたかった。
両親と妹が犠牲になったあのテロで、ニールも逝ったと周囲から聞かされていた。
遺体は最後まで見つからなかったのに。
だから、生きていると。
どこかで生きていると信じていた。自分の元に、故郷に戻ってこないのは、何らかの事情があるからだと、ずっと信じていたのだ。
昨夜はファーストミッション近くまで、見終えた。
日時を指定して打ち込むと、画面にはハロが見ていた世界が補正されて映し出される。
最初に見えたのは、ニールの足元。
ふわふわと上下するのは、どうやら足元で僅かに浮いているからだろう。
シュン。
私室のドアが開いて、中に入ろうとするニールにロックオンと、誰かが声をかけた。
『アレルヤ、アレルヤ』
ハロの甲高い高い電子音声が、通路に響く。
アレルヤ・ハプティズムと言うコードネームを持つ、マイスターのひとりが、近づいてくる。
どうやらニールは彼のことを、刹那・F・セイエイとは違う意味で気にかけていたらしく。
よくふたり一緒にいる画が映っていた。
『どうしたんだ、アレル・・・』
ニールの身体に、まるで飛び込むようぶつかってきたアレルヤ。
長い前髪が横顔を覆い、表情は見えない。
もつれるよう、ふたりそろって部屋に倒れこんだ所で、ドアが閉まった。
「・・・・・?」
何だろう。
何か今、変じゃなかっただろうか。
アレルヤという人物は、万事が控えめな男ではなかったろうか。
何やら、只ならぬ空気を感じたのは、気のせいだろうか。
『ロックオン、ロックオン』
あのまま閉じられてしまったドアに向かって、ニールを呼ぶハロのように、只管ドアが開くのを待つが、一向にその気配はなく。
『ハロ?なにしてるの?』
偶然通りかかったフェルトに拾われて、その場から離れてしまう。
「・・・・・」
ぽち。
早送り。
何だろう。
物凄く胸騒ぎがする。
それからファーストミッションまで三倍速で見続けたが、特に何かがあると言うワケでもなく。
ハロの眼には、皆に笑顔で接するニールが映っていた。
ふう。
端末の電源を落とし、息を吐く。
ハロからコードを外して、そっと抱き上げてやる。
「ありがとな」
今日は、ここまでにしようと思った。
つづく。
こんな感じで続きます。
最終回直前にこんなんですみません。