「03:肌蹴た服  少ハレアレ」

 

 

「ハレルヤ、ハレルヤ、どうして君はっ」
「うるせぇよ」
気だるげに言葉を遮り。
アレルヤの胸倉を掴むと、足を払い、思い切り後に突き飛ばした。
おかしな体勢で落ち、どこかをぶつけたのか、アレルヤの顔が歪んだ。
それでも懸命に顔を上げて、涙に濡れた銀色の眼で訴える。
「あの人が、僕に、僕らに何をしたって言うんだ!」
「あぁ?」
「他の人より、少し親切にしてくれただけじゃないか!」
「そうだな」
鼻で笑って、口端を吊り上げ。ハレルヤは足元に倒れた分身に馬乗りになった。
シャツの襟を強引に掴んで、引き寄せる。
そのハレルヤの手に、アレルヤの手が掛かった。
「どうして・・・どうして、僕に、僕らに優しい人だけに、君は酷いことをするんだ!」
相当頭にきてるんだな。
普段はもっと、弱っちい奴なのに。
自分に向けられるアレルヤの感情が、強ければ強いほど。
熱ければ、熱いほど、自分は歓喜する。
涙を流しながら叫ぶアレルヤに、ハレルヤは壮絶に笑った。
「そんなの決まってるだろうが。お前が、あのオンナに懐いてたからだ」
両襟を、思い切り左右に引っ張る。勢いよく小さな釦がはねて、散らばる。
「ハレルヤっ」
「お前は俺だけ見てりゃあいいんだよッ」
下に着ていたタンクトップを押し上げて、ピンクの胸に歯を立てた。
「痛ッ」
「お前が悪い」
びくん、びくん。と、薄い身体が、肉食獣に狩られた小鹿の如く、跳ねる。

「・・もう、ここには居られない」
諦めたのか、抵抗することをやめたアレルヤが、眼を閉じる。
閉じた目蓋から、涙が零れた。
「また、何処かに移ればいいだけだろうが」
「・・・・・そうやって移った先で、君はまた・・」
「俺は、お前がいれば何処だっていい」


だって世界は。
俺とお前で閉じられている。