05. 蹴散らせ

 

 

こないなこと、好きな人とすればええのに。と、相手が顔の上でわらう。
何のことだと乱れた息をぐっと抑えて睨みつければ、
「浮竹隊長のこと。自分かて好きなんやろ?」
今更な科白が薄い唇から零れて落ちてくる。
本当に今更『それ』か。
『好きだろうが、好きでなかろうが、お前には関係ねえじゃん』
悪趣味な奴だと思う。
快感に犯されて、ろくな返事もできないこんな時に。
『振ってくるか?こんなはなし』
「うるせぇ、よっ」
手の甲に爪をたてる。ささやかな抵抗。
『そういう自分はどうなんだよ』
どうせ聞いても、この男はひとことだって本音を言いやしないのだけど。
本音を隠しても許されるこの距離感が良くて。
そこが気に入っているからこそ、この男とこんなただれたことをしているのに。

『浮竹隊長』

あの人では駄目なのだ。
あの人の想いに、俺はきっと、いや絶対溺れる。
自信がある。
息も出来ないほどに溺れて、溺れて。
いつか。
あの人の想いは俺を殺すだろう。

だから。

「……あの人は、駄目…っ……」
「駄目?これまたどうして?」
「駄目ったら、駄目…ん、だ、莫迦っ」

それ以上言ったら、蹴飛ばすぞ!

 

 

 

 

お互い大切な人は別にいる市丸さんと海燕殿です。
浮竹さんの想いはきっと、とても重いんだろうな。
でも結局、溺れてしまったんだなと。
浮さん魔性の男?