13. 退屈の満ちる部屋

 

 

ぱらり。頁を捲る音がする。
静寂が支配する部屋に、その音だけがして。
読書をしたり、勉強をしたりする浮竹を眺めるのがとても好きだ。
何をするでなく近くの寝台に寝そべり、ぼうっとその清潔な白い横顔や頁を捲る、骨ばった白い指や、痩せた薄い背中を見るのが、好きで。
京楽はこの一見退屈な時間がとても好きで。
それは至福の時間だった。
他人なら、きっと視線が気になって仕方ないだろうが――自分がされたらとても嫌だが、浮竹はその手のことには鈍いのか、気にしている風ではなく。
ただ一度だけ「退屈しないのか?」と問われただけだ。
勿論「しないね」と答えたら、それから何も言わない。京楽の好きにさせている。
そんな浮竹が、背を向けたまま、珍しく話し掛けてきた。
「春水」
「何?」
「相変わらず退屈しないのか?」
「しないよ」
そうか。と浮竹が笑った気がした。
「俺も退屈しないよ。お前がいてくれるから」
どこまでも爽やかな声は、京楽に心地よく響いた。